ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
彼女はそう言った直後、ようやく彼女らしい柔らかい笑顔を見せてくれた。
きっと彼女のその笑顔は森村医師の手柄を自分の手柄だと思い込まれていたことに対する申し訳なさから解放された故に生じていたようだった。
『・・・はぁ・・わかりました。』
「それじゃ、また明日、お待ちしていますね♪」
『・・・よろしく、お願いします・・・。』
けれども頭の中で森村医師に対する疑問が渦巻いていた私は彼女の声かけに対して力ない声で応対し再び会釈をした後、祐希の手を引いて病室のある整形外科に向かって歩き始めた。
小児科病棟と私が入院している整形外科病棟は建物が異なる場所にある。
それらは異なる棟に配置されており、移動の際には医局前を通ると近道であることを私は知っている。
この時も、祐希を連れて整形外科病棟へ戻っていた途中だった。
「日詠先生、あの・・・」
そんな私の耳に突然滑り込んできた女性の声。
その声は医局前に繋がる曲がり角の先から聞こえてきていた。
「ん?何?どうかしたか?」
その女性の声かけに神妙な口調で応じたナオフミさんらしき声も耳にした私は
さっきまでの森村医師に対する疑問が頭から吹っ飛んでしまうぐらい彼らの様子が気になってしまい、反射的にその曲がり角の影に隠れてこっそりと彼らの様子を窺い始めた。
「パー♪」
『祐希!!しっ!』
影に隠れて彼らを見守る私の足元から身を乗り出しナオフミさんの姿を見つけ、彼に声をかけ駆け寄ろうとした祐希を私は口元に人差し指を当てながら小声で制止した。
「ママ?」
そんな私の行動を不思議に思ったのか祐希は首を傾げながら私を呼んだ。
ナオフミさんのコトが大好きな祐希が彼の姿を見つけてしまった今、この後祐希がどういう行動に出るかハッキリと予測がついた私は右手で彼の身体を抱え込んだ状態で彼らの様子を窺うことにした。
第三者が見たら非常に怪しがられそうな格好をしていたが、なんとなく彼らの前を私が通りかかって声をかけてはならないような気がしたからそうするしかなかった。
「あの、私・・・ようやくこのまま産科に残ろうという気になってきました。」
私の視線の先にはナオフミさんと顔を向かい合わせた女性がそう口にする。
私はこの人の姿に見覚えが、この人の声に聞き覚えがあった。
「・・・そうか。決心できたんだな。美咲・・」
そう。
美咲さん。