ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
1ヶ月前くらいにこの場所で
産科医師になるのを諦めようとしていた心の内をナオフミさんに打ち明けて彼に引き留められた後輩医師の美咲さん。
「ハイ。私、あの時、日詠先生に手助けをして頂いたから、なんとか産科でやっていけるのかなって・・・・先生のおかげです!」
1ヶ月前ここで見かけた彼女とは人が違うのではないかと思えてしまうぐらい彼女の口調には力がみなぎっている。
以前、入江さんが口にしていた美咲さんという人のイメージは
“冷静沈着”
1ヶ月前の彼女と今の彼女では、後者のほうがそのイメージに近い気がする
産科医師としてこれから歩んで行こうという気持ちを決めた彼女はきっと自分らしさを取り戻せたんだろう
「俺のおかげなんかじゃないな。お前の努力なんじゃないのか?」
そんな彼女に
彼らしい受け答えをするナオフミさん。
ここ1ヶ月いつもにも増して忙しそうにしてたのは、もしかしたら彼女のフォローをしていたからかもしれないのに、そういうコトを決して口にしないのはいかにも彼らしい。
「そんなコトないです。日詠先生が居て下さって私を支えて下さった・・・だからです。」
そう口にした彼女の頬は急に赤みをさしていた。
「俺は自分がすべきことをした、それだけだ。じゃあな。」
そんな彼女にナオフミさんは少々照れくさそうにはにかみながらそう告げて彼女とすれ違おうとしていた。
「あの・・・」
そんな彼を引き留めるかのように声をかけた彼女。
すがるようなその声になぜか自分がドキッとした私。
「ん?今度は何?また何かトラブルがあったのか?」
そんな私とは対照的にナオフミさんはというと
さっきまでの照れくさそうな顔から再び神妙な面持ちに戻って返事をした。
そんな彼の表情に少しだけホッとした私。
だって、頬を紅潮させすがるような声で彼を呼び止めた彼女に対して、彼は美咲さんを心配するような先輩医師らしい顔を覗かせた気がしたから。
でも・・・
「あの、日詠先生は、こ、恋人とか・・・いるんですか?」
ついさっきまでの彼女の力みなぎる声から一変して
なんだかぎこちない口調でナオフミさんに問いかけた美咲さん。
入江さんが口にした“冷静沈着”という彼女のイメージもいつのまにかそこから姿を消していたように思え、
そんな彼女を目の当たりにした私は再びドキッとしてしまった。