ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



いつもの私なら、彼に声をかけて呼び止めるところだけど、その時の私にはそんなことはできなかった。



だって美咲さんの

“日詠先生は、、恋人いるんですか?”という問いかけに

ナオフミさんは

“そんなコト”という言葉で片付けてしまったから・・




彼のパートナーであると思っている私は
正直、彼がそれをちゃんと認める姿を見たかった


彼が照れ屋さんであることはよく知っているけれど
それでも一言でいい


・・・私の存在を認めて欲しかった



もしかして私の思い過ごしかもしれないけれど、ナオフミさんに恋心を抱いているかもしれない美咲さんの前で

ちゃんと恋人がいるって認めて欲しかった



そんな些細なことにまで

彼に期待してしまう私はやっぱり

ワガママですか・・・・?




そしてナオフミさんは医局の曲がり角から様子を伺っている私達の存在に気がつくことなく、医局の中へ入って行ってしまった。


「ママ?」


込み上げてきてしまった涙を堪えようと目を閉じた私の異変に気がついたのか、祐希が私の様子を窺うような小さな声で私を呼んだ。




『いないいない、、、ばあ!よし!私達も昼ごはん、行くか♪行こ、祐希!』



子供の前で涙を見せちゃいけないと思った私は

両手で両目を覆い、いないいないばあをするフリをしながら涙を拭き取り
医局の裏の道の方角を指差しつつ祐希の手を引いて再び歩き始めた。



そして、病室に到着した私達は早速、ブリの照り焼きがメインおかずの昼ごはんを一緒に食べ、祐希に昼寝をさせようと右腕だけで彼を抱え込みながら抱き上げてベビーベッドに寝かせた。


私のベッドと祐希のベビーベッドは同じ高さになるように配慮されており、私も祐希と一緒に横になって彼の背中をトントンしながら寝かしつけをし、5分ぐらいで彼は眠りに陥った。


いつもの私なら彼と一緒に昼寝をしてしまうのだが、今日に限っては・・・

午前中、伊藤先生から聞いてしまった
森村医師が行ってくれていた意外な行動によって

そしてお昼すぎにこっそりと様子を窺ったことで耳にしてしまった・・・美咲さんの問いかけに対するナオフミさんの期待外れな返答によって

頭の中がモヤモヤしてスッキリしなかった私は昼寝をすることができず、怪我をしていない右手でナオフミさんから貰った小さなハーモニカと婚姻届を強く握り締めて続けていた。


ちゃんと見えていたはずの私とナオフミさんの幸せな未来がなんとなくボンヤリとし始めていた私は・・・そうすることしかできなかった。


私とナオフミさんに今後どんなコトが起こっても
それらがきっと私達をちゃんと繋いでくれている


そう思ったから・・・



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