ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
でもこのまま無視し続けるわけにはいかないと思った私はドアの向こう側が誰であってもとりあえず失礼のないように私は丁寧に返事をしておいた。
「失礼します!」
ガチャ!
「高梨さん、初めまして。整形外科の矢野です。回診に来ましたが、息子さん、お昼寝中されているようですのでまた、後で・・・」
突然姿を現した白衣を着た50代後半ぐらいであろう男性医師。
白衣の下はキッチリと締められたネクタイ姿でいかにも真面目そうな雰囲気が漂う。
その後ろには森村医師も立っていた。
回診か
森村医師もいるけれど
一対一でイキナリ顔を合わせるよりは
とりあえず 二対一で顔を合わせておいたほうが
回診の話ついでにお礼も言えちゃうかもしれないし
『あっ、今、診て頂いても構いません。そろそろ子供も目を覚ましそうな時間ですので。』
「そうですか。じゃ、お言葉に甘えて。早速、左手、診せて頂きますね。」
そんな企みを抱きながらへらりと笑ってそう答えた私に、矢野医師も丁寧に言葉を返しながら病室内へ静かに入ってきてくれた。
その後ろからは森村医師も軽く会釈をしながら入ってきた。
珍しく落ち着いた様子で。
そんな彼に目を奪われている間に、矢野医師は手首固定用のプラスチック装具を外し、左手のひらに巻かれている包帯とガーゼをもそっと外した。
「傷口、きれいだね。今日で手術して2日目だっけ?経過、教えてくれる?」
後方を軽く振り返りながら、森村医師に説明するよう促した矢野医師。
「・・・ハイ。」
矢野医師の背後にいた森村医師も珍しくきちんとした口調で返事をした後に私の目の前に立った。