ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


普段は俺につっかかるように声をかけてくることもある森村医師
今さっきの彼はそれとは真逆な言動

急いで帰りたかったせいなのか?
食堂で名刺を渡して来た看護師への俺の応対への不満のせいなのか?
それとも、
伶菜に何かあったのか?


既に帰宅した様子の彼からそれを窺い知ることができなかったことによって
俺の勉強への意欲が削がれた。


『空回りしてるのかもな。俺。』


俺はノートパソコンの電源を落とし本を閉じてから、デスクの引き出しにしまっておいたスマートフォンを手に取って仮眠室へ移動した。




仮眠室のベッドに横になってそのまま眠ればよかったのに


『松浦さん、作業療法士で、ハンドセラピスト・・・?』


空回りを自覚しながらも、まだもがくことをやめられない俺は伶菜の治療の鍵を握っていそうなもうひとりの人物をスマートフォンで検索し始めたのがきっかけとなりなかなか眠れなかった。


どこでも、いつでも眠れる体質の俺が眠れない
眠れないままベッドに居続けること
それに慣れていない俺は仮眠をとることを諦めて、仮眠室を出た。





午前0時過ぎ。

伶菜の病室がある整形外科病棟へ向かう。
病室へはナースステーションの前を通らないと行けない病棟構造。
看護師が各病室を見回りに出かける時間帯を狙って動いた俺。

無人状態であるナースステーションの前を無事通過し、安堵する俺は他人から見たら明らかに不審者だ
それでもそんなことには構っていられない

本当は伶菜に会って顔を見て話をしたい
彼女の好きそうな菓子を不意打ちに食べさせるいつものいたずらをして元気にしてやりたい

でも、昼間は自分がバタバタしているし、
就寝前は病棟がバタバタしているし、
訪室するタイミングがなかなか得られなくて
夜中に動くしかない
丁度眠れなかったしな


コン・・・コン・・・


寝ているであろう伶菜を起こしてしまってはいけない
いきなりドアを開けて、眠れていないかもしれない伶菜を驚かせてはいけない

そう思った俺は指先で病室のドアをタッピングした。


返答なし。





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