ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「日詠・・先生・・・あ~、オペ室の杉野さんのテンション上げた張本人・・」
『・・・・・・』
「でも、高梨さんの婚約者なんですね・・・おかしいな~。似たようなことをした人がついさっきいたような・・・」
『えっ?』
「0時のラウンド(見回り)前、他の部屋でナースコールがあってそこへ向かう途中にここを通りかかったんですけど、日詠先生よりもう少し背の低いおっさんが、ここに入ろうとしていて・・・」
俺よりもう少し背の低いおっさん?!
ここに入ろうとしていた?!
伶菜の病室だぞ
ここは
しかも午前0時前
ついさっき、伶菜は熟睡状態だったぞ
『誰だ・・・』
「彼女の主治医で、フィアンセだそうです。」
『フィアンセだと?』
「堂々とフィアンセって宣言していました。その変態おっさん。」
主治医
変態おっさん
そこまではわかる
でもフィアンセ宣言はあり得ないだろ?
俺が婚約者だから
「ドクターの間で、流行っているんですか?病室夜這い謎解きゲームみたいなこと。」
『謎解きゲーム?』
「かわいい女性患者の部屋に隠された謎解きをして、婚約者宣言する・・みたいな。」
伶菜がかわいいのは当然だ
でも、他人、しかも異性であるこの人からそれを聞かされるのは
また心配事が増えてしまったように思えて仕方がない
「とにかく、夜這いはダメです。安全管理上、困りますのでご遠慮下さい。」
いくら忙しいとか、タイミングが合わなくてこの時間の訪室になったと言っても
他人から見たら俺のやっていることは夜這いになるのだろう
『すみませんでした。以後、気を付けます。』
「夜間の謎解きゲーム、ダメだって、あの変態おっさんにも言っておきましたから、婚約者の奪い合いは明るい時間帯にお願いします。」
『・・・はい。』
「高梨さんの奪い合い、頑張って下さい!」
俺が素直に謝ったせいなのか、男性看護師は笑顔でそう言いながら俺に会釈をして、ナースステーションのほうに向かって歩き始めた。
俺よりもひと足早くここに現れた男から伶菜が何もされていないか、無事を再度確認したかった。
けれども、注意されたばかりの俺がさすがに再度、伶菜の病室内へ入室することはできなかった。
こういう時に鳴ってくれればいいドクターコールも
今は静かに待機中。
することがなくなった俺は仮眠室へ戻った。
『恋愛は先着順じゃない』
『婚約者の奪い合い・・・か』
第三者である矢野先生や整形外科病棟の男性看護師のその一言のせいで
俺は熟睡できるはずの布団の中で目が冴えて仕方がない夜を過ごした。