ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
病室の入り口のドアをノックする音。
リハビリの進行具合をチェックするために来た看護師さん?
それとも照頭台の掃除に来てくれた看護助手さんかな?
昼過ぎに掃除くるねって言ってたし
「入っていいか?」
『・・・あっ、うん』
なぜか全くノーマークだったその声。
だから余計なコトを考えない内に
反射的にいつものようにくだけた口調で返事をしてしまった。
ガチャッ!
『あーみかん大福?そうだよね?みかん大福だよね♪』
それだけには留まらず、ドアの隙間から差し出された私のダイスキな和菓子屋さんの上品な紙袋を見つけて思わずいつもの自分らしく声を上げてしまった私。
昨日、医局前での美咲さんの “日詠先生は恋人とかいますか?” という問いかけに対して私という存在を出そうとはしなかったナオフミさんに少々ガッカリとした私だったのに。
昨日、彼が書き置きした付箋を見つけた時、
森村医師の言動によって自分の心が大きく揺れたことで
ナオフミさんといつものように向き合える自信がないなんて戸惑っていた私だったのに。
それぐらい甘いモノには目がない私。
「・・・もうみかんの旬の時期は終わっただろ?今日のはいちご大福。あとコレも。」
そう言いながらようやく姿を現した彼の右手には
Hieiと手書きで書き込まれた黄色のビニールテープが貼り付けられた青色のチェック模様のマグカップが携えられていた。
「緑茶のほうがよかったかな?」
若干はにかみながらそう口にした彼は
やっぱりいつも通りの彼で。
『う、ううん、ううん・・・それで大丈夫。』
一度はいつもの自分らしくダイスキなスイーツに飛びついた私だったけれど
彼のそんな姿を目の当たりにして
首をややオーバー気味に横に振ったり、どもった返事をしたりするなどやっぱり戸惑いを隠せない私がいた。
やっぱりまともに顔を合わせられない
美咲さんに自分の存在をちゃんと伝えてくれなかったナオフミさんにガッカリとした顔を見せてしまいそうで
でも、それよりも
森村医師に心を大きく揺らされた自分が
ナオフミさんに対して申し訳ないことをしたような素振りを見せてしまいそうで