ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
こんなにも自分の心がグラグラと揺れている状況で
本当にこんな自分が
彼の奥様になってもいいのかな?
彼は、きっと真っ直ぐに
自分のコトだけを想ってくれているのに
シアワセなはずなのに
私、どうしちゃったんだろう・・・・?
ピピピッ、ピピピッ
そしてグラグラと心の中が揺れていた私による
“彼は真っ直ぐ自分だけを想ってくれている”という偏った予測は
その院内PHSの着信音と共に覆され始めていた。
もちろん自分自身に余裕がなかった私はこの時点ではそれに気がついていなかったけれど。
「ハイ、日詠です・・・福本さん、あー、今、伶菜のとこにいるけど・・・あー、はい、いいです。・・・はっ?何、だって?!わかりました、すぐ行きます。」
PHSを手にしていた彼の頬からは
すっかり赤みが引いていて
彼の目からはいつものような目力は全くといっていいほど感じられなかった。
「悪い、呼び出しだった。ゴメン・・・俺、行ってくるから。また、来る。」
何も悪くないはずの彼は申し訳なさそうに私に謝り、そして一瞬微笑みを見せた直後、病室から出ていってしまった。
私が言いかけた
“もう少しでいいから、、傍に居たい”という言葉を
最後までしっかりと聞くことのないまま。
彼が再び私に聞き返すこともないまま。
そんな彼が私に見せてくれたその微笑みは
口角を無理矢理引き上げて作られた、なぜか見ているこっちが苦しくなるようなモノだった。
そして、その微笑みは
いろいろな想いが複雑に絡み合っているのは
私だけではなく、彼も同じであることを暗示していて。
でも心が大きく揺れていて自分自身に余裕がなかった私は
その時、その暗示にも気がつけていなくて
それにちゃんと気がついたのも、もう少し後のコトだった。