ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
Hiei's eye カルテ17:彼女と俺の気になる温度差
【Hiei's eye カルテ17:彼女と俺の気になる温度差】
『8時25分?!』
深夜帯に伶菜の病室を訪室した後、寝つきが悪い中でもなんとか眠っていた仮眠室で迎えた朝。
眠りに落ちてからは珍しくドクターコールが鳴らずにいつもではあり得ない時刻まで眠ってしまっていた。
そんな中、廊下から聞こえる他のドクターらしきコール対応の声によって目が覚めた。
『良かった。今日、休日で。』
ベッドから立ち上がって、脱いでいた白衣に袖を通し、仮眠室を出る。
もう起きているであろう伶菜達に会いに行くことも考えた。
しかし、伶菜はおそらくリハビリへ出かける頃だったり、病棟も夜勤と日勤が入れ替わる時間帯でバタバタしていることを考えると、今はそれをやめておいたほうがいい・・・そう思った俺。
『手の外科の勉強してもいいけど、せっかくの休日だ。喜ぶ顔が見たい。』
今日午前の自分の行動を決めた俺は医局更衣室で着替え、医局デスクの引き出しにある鞄を持ち出すためにそこへ向かった。
引き出しを開けた後、デスクの上に置いてあったものに気が付いた。
『抄録、もう書いたのか・・・』
それは後輩医師の美咲が作成した産婦人科学会の発表演題抄録と添削宜しくお願いしますと書かれた水色の付箋。
この抄録作成はあと2週間ぐらい要すると思っていたのに
考察内容もしっかりとしたものを作り上げてきている。
『美咲、確か、暫く休日なかったはずだが・・・今はいろいろやりたい時期なんだな、きっと。』
数日前に産科で頑張って行くことを俺に伝えてくれた美咲だったから、その意欲の波に乗って頑張っているんだ
俺は、そんなことを思いながら抄録に目を通し、修正箇所を赤ペン添削した後に、美咲のデスクにそれを返却しておいた。
『よし。後は大丈夫だな。また午後、来るしね。』
鞄を持ったままだった俺は迷うことなく病院外へ出た。