ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
コンコン!
昨晩の指先でタップする遠慮気味だったノックではなく
昼間という遠慮のいらない時間帯だからできる拳でのノック。
『入っていいか?』
「・・・あっ、うん。」
少し間があったものの、ちゃんと彼女の返事が聞こえ安堵する。
その流れで、迷うことなくドアを開ける。
彼女のはしゃぐ声が聞きたくて、自分の姿をドアの後ろ側に隠したまま、手に持っていたいちご大福が入った紙袋を彼女に見えるように差し出す。
想定内の、彼女のはしゃぐ声。
想定外の、彼女が発したみかん大福という単語。
俺は期待通りのはしゃぎ声に目を細めながら大福のフレーバーの違いを伝えると
いつもなら、恥ずかしそうに舌を小さく出す彼女なのに
なぜか、どもった返事と激しく首を振るオーバーリアクション。
おまけに彼女は目も逸らしてしまった。
いつもと違う
明らかに
自宅ではない環境だから・・か?
違う環境・・
あっ、昨日の夜
背の低い変態おっさん
いや
主治医で彼女のフィアンセだと堂々と宣言した男がここに来たって言ってたな
まさか・・・
『やっぱり、何かあっただろ?』
どもってしまうぐらい動揺しているかもしれない彼女を問い質すことが正しいことなのか?
それを判断をしないまま俺はそう声をかけた。
昨晩、俺が伶菜の病室に入る前に、森村医師がそこに入って行こうとしたのを見た人間がいるんだ
俺みたいに、寝ている彼女にキスとか
その他のことまでも・・・
あ~、いいことなんて考えられない
彼女自身から何もなかったという言葉を聞かないと
落ち着くことなんかできやしない
「えっ?なーにもないよ♪気のせい、気のせい♪」
へらへら笑う彼女
黒だ、クロ
『伶菜。俺は2回も騙されないから、ちゃんと言えな。』
間違いなくブラックだ
そう思った俺は、自分の額を彼女の額にコツンと押し当て、
逃がさないぞアピールする。
額が当たった瞬間、両肩を竦めた彼女。
それでも、くっついている額を離そうとはしない。
額伝いでじわじわと感じる彼女の体温。
不意にぐらりと揺れる自分の心臓。
「・・・も、もう少しでもいいから」
何があったか俺が彼女に聴いていたはずなのに
なぜか、ニードを口にしようとしている彼女。
そのせいで
『一緒に居たい』
「・・・へっ?!」
ミイラ取りがミイラになる
まさにその状態の俺はくっついたままの額から彼女の体温を感じながら自分のニードを彼女にぶつけていた。