ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



でも、それだけではなく
美咲さんを抱きしめたナオフミさんに対する
どうしようもない不信感も



屋上でのあの出来事以来、いまだに顔を合わせられていなかったナオフミさんとせめてココロだけでも彼と繋がっていなければと焦っている自分なのに
それすら全然できていない自分にただただ溜息をつくしかなかった。
ベッドに潜り込んで随分経つのになかなか眠りにつけない自分にも。

窓のカーテンの隙間から漏れる月の光に目をやりながら、普段はあまり感じない夜の長さにも溜息をついた。






パタパタパタッ・・・・・・




廊下のほうから聞こえてきたこちらのほうへ近付く足音。


それは
夜勤の看護師さんの見回りの足音・・・?

患者さんとかの急変がほとんどない整形外科病棟では
深夜の病棟内での音といえばそれぐらいしか思い浮かばない。


そうでなければ私と同じように眠れないでいる患者さんの彷徨える足音

この際、どちらでもいい

聞こえてくる足音がどちらであろうと
今の私には関係ない





ガ・・・チャッ・・・・・



はずだったのに。



「・・・やっぱり、もう、寝ちゃってる、よ、な・・・」




音が響かないようにそっと開けられたドアの隙間から聞こえてきた本当に小さな呟き声。
そんな呟き声によって私はすかさず目を閉じた。
ドアの向こう側の彼と真正面切って顔を合わせる勇気がなかったから。




だって今、もし、彼と向かい合うことになったら
私、どういう顔をしたらいいのか
全然わからない



わからないんだ・・・










パタッ、、パタッ、、パタッ、、




眠っているフリをしたものの、自分が本当はどうすべきかわからないままでいることによって
バクバクしてどうしようもなくなっている自分の心臓あたりに手を当て目を閉じたままでいた私。



そんな状態でいてもドアの隙間から漏れてくる光がより明るさを増したのを瞼越しに感じたことによって

そして

足音がどんどん私のほうへ近付いてきていたことによって
すぐそこに彼がいるという気配はしっかり感じられた。


「・・・・・・・・・・・」


眠っていることにしている私に声をかけずにいた彼の気配を。





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