ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来




「ああ、でも、オレは人の女を奪い獲るだけの自信が・・あの頃の自分にはなかった。医師として、そして人間としての自信もなかっただけにね。」



ガチャ、カチャ・・ン




彼の手によって再び銀色の楕円形の皿に軽く投げ込まれたピンセットが既にそこに入れられていた使用済みのピンセットとぶつかる音。
それはあまりにも、耳障りな高い音で。
それにも構うことなく彼は処置カートのハンドルに右手をかけてもたれかかりながら再び口を開いた。
少々、切なそうな表情を浮かべてしまう、いつもの彼らしくない表情で。



「・・・そんなキミが・・・再びオレの前に現れた時は驚いたよ。あの時も、オレはキミの傍にいた人に引け目を感じて、自分からキミに声をかけることができなかった。」

『・・・引け目?・・・私の傍にいた人にって?』



そんな彼の表情を目の当たりにした私は
せめて真っ白になった自分の頭の中をどうにかしなくてはと思い
なんとか彼の発言の内容を把握しようとようやく集中し、そして彼に尋ねた。



私の記憶とは異なるらしい”私と彼の再会の時”を
そして
彼が引け目を感じているその人物を

・・・正確に把握する、そのために。








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