ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
私にそう問い質された彼はというと
突然、私から目を逸らし、病室のドアの前まで移動し、そこに勢いよくもたれかかって腕組みをしながら再び天を仰いだ。
彼が勢いよくもたれかかった拍子に少しだけ開いてしまったドアを閉めようともしないままで。
「オレが外科当直していた救急科に、私服姿で険しい顔して、キミに付き添って現れたのが、普段はクールな表情しか見せない・・・日詠さんだったから。」
そう口にした彼のその姿もやっぱり
切なく見えて仕方がなかった。
いつも強気でオレ様な彼が
彼らしくないような弱気な態度を
隠しきれていなかったから・・・
でも、もしかしたら、今の彼の姿が真の彼の姿
そうにも思えてしまったから・・・・
『あの時、私・・』
そして、ようやく過去の自分の記憶の一部が頭の中に浮かび上がった私。
「ああ、キミが妊娠していた時のコトだ。日詠さんがいつもの彼ではないことは彼の表情から手に取るように解った。あの時の彼は医師としての顔ではなく、一人の男の顔だったから・・・・。」
『・・・・・・・・』
「あの時もオレは、日詠さんを押しのけてまで、キミの目の前に自ら現れることができなかった。キミに自分の存在を知って欲しいと思っていながらもね。」
そう口にした彼のその姿もやっぱり、
切なく見えて仕方がなかった。
私の前ではいつも強気でオレ様な彼なのに
彼の中だけに秘めていたと思われるという葛藤という感情が露になってしまっていたから・・・
でももしかしたら
彼のその姿が
自信満々な態度とかオレ様な態度とかは、あくまでも仮の彼の姿であって
葛藤に苦しめられていた彼が、真の彼の姿
そうにも思えてしまったから・・・・
「でも、キミがあの保険屋の男に騙されていたことを知った瞬間、オレも丁度屋上で煙草を吸っていてオレもその事実を知ってしまった。」
『・・・・・』
「だから、オレはもうなりふり構わずにキミを自分の手で守りたいと思った。キミに再会したことは、もしかしたら自分にもたらされた運命なんだって・・・そう思い込んで。」
なりふり構わずにキミを自分の手で守りたい・・・・
自分にもたらされた運命・・・・
“一目惚れ”
ただそれだけでも
そこまで
そんなにも
私のコトを想っていてくれたの?