ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



大切にするという言葉
今も右手で握り締めている・・・日詠尚史と書き入れてくれた婚姻届
ナオフミさんが私にくれたそれらの2つのかけがえのないものによって、例えふたりが離れた場所に居ても彼と自分はちゃんと繋がっている
・・・今まではそう思えていた



でも、今は
屋上で美咲さんを強く抱きしめていた姿を目にしてしまった今は
ナオフミさんが本当に自分のことを好きでいてくれているのか
今ひとつ確信が持てなくて・・・・

それだけじゃない


森村優という人が自分のことを本気で想ってくれていることを知ってしまった今、ナオフミさんと自分のココロがちゃんと繋がっているのかも
確信が持てなくなってきてしまっているんだ・・・




だから私は

『・・・・ナオフミ、さん・・・』

ただ彼の名前を呟くことしかできなかった。



「伶、菜・・・・・」

「高梨さん!!!!!こっちに右手を出すんだ!!!!」


力なくそう呟きながら
ようやく私のほうに顔を向けてくれたナオフミさんと
私の背後にいた森村医師の力強い声が
重なってしまった。


いや、重なったというより
森村医師によって遮られてしまったと言ってもいいんだろう。
私は森村医師の声に反射的に振り返り、そして左手を差し出した。



しかし・・・・

「左手じゃなくて右手のほうだ。さあ、早く!!!!」


畳み掛けるように強い口調で私を促した森村医師。


その勢いにも圧倒されて、怪我をしていない右手を差し出すという不可解な森村医師の指示に疑問を抱く余裕すら与えてもらえないまま、
かけがえのない大切なものを握り締めたままの右手を森村医師の目の前に差し出してしまった。








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