ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


彼が必要とされる場所に
彼を必要としている人のもとに
行く、行かないの決断を口にしないまま私にそう問いかけた彼。
いまだにその声には張りが感じられず、彼は冴えない表情をも浮かべる。

彼を名古屋へ今すぐに向かわせてあげたい
私はそう思ったけれど
彼はどうしたいんだろう・・・?


そういえばさっき、“ようやく彼女と・・” って口にしてた
それって、今すぐ彼の手を求めている人のところへ行くコトよりも
私とこのままいるコトを選ぼうとしている?

でも、もしそうだとしても
患者さんを、産科医師という仕事をココロから大切に思っている彼がこんなにも必要にされているというのに
行きたくないなんて、考えられない

それについさっき私と目を合わせようとしなかったのは
私に対してなにか後ろめたいような気持ち
それを持っているからなのかな?


後ろめたい気持ち
それは
一緒にいたいけれど、自分の手を求められているところへ行くべきなんじゃないだろうか

きっと、そういう気持ち
それが彼の中にそんな気持ちが芽生えてきているのなら
もしそうだとしたら
・・・だとしたら、やっぱり

彼が私に気を遣うことなく
彼の手を求めている場所へ
その人のもとへ
向かわせてあげなきゃ

それに私なら大丈夫

だって彼はまた
私のところに、ちゃんと戻ってきてくれるはずだから
そう信じてるから・・・


『大丈夫、私なら大丈夫だから。』

「・・・・・・・・」


彼は黙ったまま再び目を閉じ、そしてゆっくりと唇をグッと噛み締めた。


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