ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「スミマセン、突然、口出ししちゃって・・でも、きっと日詠先生のキャラクターから言って、きっとご自分からはお話にならないでしょうから・・・」
そして松浦先生は更に言葉を続けた。
森村医師のよき理解者であると思っていた松浦先生が
ナオフミさんが秘めているであろう内容を口にしようとしているなんて
やっぱり意外だった。
「ちょうど1週間前だったかな、僕は1日のリハビリ業務を終えて、帰宅しようとしていたんですが・・・突然、日詠先生から電話がかかってきたんです。“高梨伶菜に対するリハビリを教えて欲しい”って。」
そして松浦先生は右手に持っていた関節の角度を測る定規を開いたり閉じたりしながら俯いてボソボソと呟き始めた。
そしてその場にいた誰もが彼の呟きに耳を傾ける。
「失礼なコトを申し上げちゃいますが、突然の日詠先生からのお申し出・・・面倒くさいなと思いました。整形外科ドクターでもない日詠先生に手のリハビリの話をしても、どうせ理解しきれないだろうって・・」
『・・・・・・・・』
「それに俺、彼女と夕飯食べに行く約束していたし、正直、早く帰りたいと思いました。」
面倒くさいと言われてしまったナオフミさん
そして
もしかしたら松浦先生に裏切られた形になるかもしれない森村医師までもが
彼の呟きを邪魔することなく聞いている。
「だから僕、日詠先生を試してみたんです。もし、僕の質問に答えられなかったら、さっさとお引き取りして頂こうって。手のリハビリなんてそんなに単純なモノでもないですしね。」
そして松浦先生は勢いよく定規を閉じ、それを白衣の胸ポケットにしまった直後、定規を見つめていた視線を突然、前方へずらした。
「で、早速、日詠先生に質問を投げかけたんです。手の外科専門ドクターの森村先生や僕たちリハビリ訓練士ぐらいしかわからない、屈筋腱の早期運動療法についてを・・・絶対に答えることはできないだろう・・・って踏んでたのに・・・」
「・・・・・・・・・・」
自分のコトを言われているナオフミさんなのに
彼は何も言葉を発することなくずっと下を向いたままだった。
松浦先生が彼を試すようなことをしていた事実を耳にしても。
「なのに日詠先生は全て説明することができちゃったんです。あり得ませんよ・・・専門外のドクターが屈筋腱の早期運動療法について完璧に説明できてしまうなんて・・・・僕らリハビリ訓練士でも手のリハビリを専門的に行っている人間しか理解していないのに・・だから、僕、高梨さんのリハビリを日詠先生に一から伝達しました。日詠先生・・・頭の中での理解だけでなく手の感覚までも完璧です。」