ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



「なんか、いいことあった?」


『いえ、急いでいるんです。』


「そ~お?昨日までは死にそうな顔してたけど、なんかふっきれたの?」


『別に・・・』



ナースステーションでにやりと笑いながら俺に声をかけてきた福本さんにかまっている時間はない



「日詠先生・・・抄録の修正と質疑応答対策、考えてみたんですけど。」


『後で見ておくから、預かる。』



回診で隣になった美咲から渡されたUSBメモリーを受け取り、白衣のポケットに入れる。
もちろん、急いでいる俺は美咲から学会準備についての詳細まで聴く暇もない



「日詠先生、先生の担当患者さんの坂本さん、お腹が張りすぎて痛くてつらいそうですが、ちょっと診てもらっていいですか?」


『回診が終わったら・・・行きます。』



看護師の山村主任がちょっと疲れた表情で俺に診察依頼してきたのには、早めに対応したほうがよさそうだ
本当ならば、回診が終わったらすぐに伶菜がいるはずのリハビリセンターへ行きたいと思っていたが



「日詠先生、先生の顔を見たら、お腹の張り、少し楽になりました~。張り止めの薬が効いてきたからですかねっ!」


『それはよかったです。無理はしないで下さいね。」


「は~い。」



回診後、急いで様子を見に行った担当患者坂本さんはすぐに処置等はいらなさそうであることに安堵し、時計を見た。

午前9時20分。

伶菜のリハビリ、もう終わってしまったのかもしれない
でも、今日行かなければしばらく行けそうな時が思い当たらない

『よし、走るか。』


俺はリハビリテーションセンターに繋がる階段を駆け降りた。
エレベーターを待っている時間がなかったから。


伶菜とどうやって向き合えばいいのかなんて
ゆっくり考えている時間もなかった。

見えてきたリハビリテーションセンターの受付看板。
そこを通過して伶菜がいるであろうリハビリルームへ直行
・・・するはずだった。

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