ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来




「・・・カッコ、よかったな。あの人。」

『・・・カッコ、よかった、な?』


予想外の発言についついオウム返しをした私。


「ああ、羨ましいぐらいにな。かなわないって思った。オレも結構、レイナを大切にできる自信があったけど。でも、あの人にはかなわないことを思い知らされたよ。」

「すげえ、行動力ってヤツ?!レイナのためならあの人、きっと何でもするぜ。もしかしたら5億円強盗とかでもす」




グイッ!!!!




「・・・俺は法に触れるようなコトまではしない。」



右手を強く引き寄せられたのと同時に
左耳から聞こえていた森村医師の声が遠くなり、
そして今度は右耳が本当に小さな囁き声を拾っていた。
ちょっぴり照れくさそうな低くて心地いい声を。



「おっ、聞こえちゃってたんだ、地獄耳――――♪早速、睨まれちゃったな、オレ・・・コワッ!!!!」



そして左耳のほうは再び森村医師の声を拾っていた。
いかにも彼らしいちょっぴりおどけたような声を。


・・・フウ・・・



そして

森村医師のイジワルな発言に対して堪え切れなかったのか
私の右側ではナオフミさんが小さくゆっくりと溜息をついていた。




「溜息つかれちゃった?!オレ、あの人に刺されたりしたくねーから、そろそろ逃げるかな・・・あっ、そうだ、キミ、美咲さんっていったっけ?」

「・・・は、?!」


自分の耳元から再び遠ざかってしまった森村医師の声。

その声のするほうへ振り返ると
彼の顔はすぐ傍にいた美咲さんのほうへ向きを変えていた。





私の角度からは彼の横顔しか見えなかったが
彼のあんな横顔を垣間見たのは
この時が初めてだったかもしれない。


一点の曇りもないような
“ココロが澄んでいるような横顔”を。


「オレはさ、仕事上での同志に恋心を抱いたりはできないな・・相手の実力を認めていればいるほどね・・・ましてや、自分の大切な患者さんを預けることなんて簡単にはできないけどな・・・よほど信頼している同志じゃないとね・・・・ま、、オレはそんな感じだけどな。」

「・・・・・・・・・」



再び右手で左肩を掴みながら、かすかに笑みを浮かべそう呟いた森村医師。
その動作は産科のデイルームに到着した直後にも見かけたけれど
本当にだるそうだったその時とは異なり
なんだか照れ隠しのために無意識のうちにそうしているように見えてしまった。

無理もない。

いつもはオトボケでイジワルな発言ばかりする彼が
美咲さんが前向きになるようなコトバを
彼女のために丁寧に紡いでいるのだから・・・





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