ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
そんな彼を目の前にして
美咲さんはというと
相変わらず両肩を竦めたままだったけれど
それでも彼女はじっと森村医師をみつめた。
彼女は彼の言葉から何かを掴もうとしているような
そんな目をしているようにも見えた。
「あんな殺人的な忙しさでも、後輩につきっきりで教えるあの人のような元気は、オレにはない。それにオレ、あの人にかなりプレッシャーかけたつもりだけど。オレとしても今度こそ高梨さんを自分のほうへ引き寄せるチャンスだと思って必死だったしね。なのにさ・・・あの人、バケモノだな。」
「・・・・あ・・・」
さすがに自分の発言に対する照れくささに打ち勝てなかったのかいつものような毒を吐いた森村医師。
そんな彼に圧倒されてしまった美咲さんは
何かを言おうとしていたにも関わらず再び言葉を失ってしまっていた。
彼の毒に触れたことない人は
そういう反応をしても仕方がない。
でもこういう姿、いかにも彼らしかった。
「ま、オレも高梨さんにフラレちゃったしね。お互いにこれからしばらくは仕事が恋人ってコトで!忙しいトコ、オレのボヤキにつき合わせて悪かったね・・・・頑張れよ!ピンチヒッター!!!」
「・・・・・・あの、私・・・・」
バサッ!!!
「じゃあね、美咲ちゃん♪」
美咲さんがなにかを言おうとしていたのにも関わらず
彼女を励ますコトバを口にする善人行為がもう限界に達したのか
森村医師は羽織っていた白衣を勢いよく脱ぎ、肩にひっかけながら美咲さんにそう声をかけた直後、私達に背を向けて歩き始めた。
「あっ、あの、ありがとうございました!私、少しでもピンチヒッターになれるように頑張ります・・・」
「おう!」
彼の背後にいた美咲さんは大きな声でそうお礼を言いながら
彼に見えていないにも関わらず深々と頭を下げた。
お礼を言われた森村医師は決して彼女のほうへ振り向くことも足を止めることもなく、右手をひらひらと振りながらやはり照れくさそうに返事をした。