ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


『そんな顔、してるように見えるのは、俺の気のせいか?』


頭の片隅に静かにずっと居座り続けたその横顔が
今、この瞬間に出てきたのは
多分、俺の気のせいじゃない


でも、正直、気のせいであって欲しい

俺にとっては伶菜は
ずっと捜し続けて、
運命だったかのように再会を果たして
ようやく手にした宝物

その宝物が
俺の手の中から飛び立って羽ばたくのをひたすら応援できるような心
それを今の俺は持ち備えていない



『・・・俺はお前に傍に居て欲しい。』



だからこんなズルイ言葉をこぼす
伶菜のこれからの一歩を阻むようなそんな言葉を


ずっと傍に居たい
それは俺の本心


でも、それは愛しいと思う女が前へ進もうとしていることを阻むこと
それを彼女のことを愛しているからなんて
胸を張って言えるのだろうか?


本当に愛しているからこそ
背中を押してやるべきなんだろう




『でもそれはきっと、俺のワガママなんだな。』





今にも泣きだしそうな顔の伶菜。

俺の胸騒ぎは俺の気のせいなんかじゃなく
彼女の本心が見えた

それが今の彼女の顔から痛いほど感じられた。

自分の足で歩み出したい
そんな彼女の想いまでも・・・



愛している
だから傍に居る

それが本当に正しいことなのか

別の愛し方があったもいいんじゃないか・・・


それをちゃんと伝えてやりたいのに






ピピピピッ・・ピピピピッ


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