ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


『・・・ハイ、日詠です。・・・ハイ・・・・向かいま』


こんな時まで俺には時間が足りなかった。



それを覚ったのか、美咲が俺のPHSを奪い獲り、自分がコール先に向かうと申し出てくれた。

後輩医師の頼もしさに寄りかかることで得られた大切な時間を
ちゃんと伶菜のために使わなければならないと思った俺は
伶菜と一緒に屋上へ向かった。

俺の、そして伶菜の人生の分岐点の場所になっていた
屋上へ・・・・




『そういえばさ、お前と初めてじっくり話をした時も、今みたいにココで、メロンパンを食ってたよなあ・・・』


馴染みのある屋上のベンチにふたりで腰かけて、白衣のポケットに入っていたメロンパンをシェアして食べることを勧めた。

もう自分の想いだけで動くことはできない
そう自分に言い聞かせながら、メロンパンを齧《かじ》る。

甘いはずのメロンパンなのに
あんまり甘く感じられない

舌の感覚までも
今という時間を受け入れることに難しさを感じているようだ

でも、ちゃんと背中を押してやらないと
多分、俺は激しく後悔する



「ナオフミさん、ワガママなのは私のほ」

『お前はさ・・・自分が進みたい道を行けばいいさ。』


だから
叶えたい夢を見つけたであろう伶菜の背中を
ちゃんと前に押してやること


『いつかさ、こういう時が来ると思ってたから・・・・・あの母さんの娘だしな。』

『母さんは・・・いやお袋はさ、ウチの病院の小児科病棟のプレイルームを立ち上げた人なんだ。』

『お前も、そこで、プレイルームで何かを見つけたんだろう?』



それが
俺の愛し方なんだろう



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