ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「よし、じゃ、そういうコトで坂田院長、一刻も早く辞令下さいね、オレ、フルネームは森村優って言うんで!ヨ・ロ・シ・クでーす♪」
足早に坂田院長に近付き、即座に彼の両手と無理矢理ガッチリと握手をし、その手を上下にブンブン振りながらニヤリと不気味な笑みを浮かべた森村医師。
はあぁ・・・
森村医師のコト
出逢った頃は苦手を通り越してキライだった
怪我を治してもらっていた頃はスキと言われて、気持ちがグラついてしまったぐらい
でも、それらはもう過去のことだと思ってた
でも、出勤初日の今
こんな騒ぎになっちゃうぐらいだから
もう過去のことではなくなっちゃった?
今後、ワタシ
どうなっちゃうの・・・・?
「伶菜ちゃん・・・・」
さっきまでソファーにもたれリラックスしてたはずの奥野先生がいつの間にかドア付近で立ったままでいた私の隣にいて、そして耳元で私の名前を囁いていた。
「もしかしてさ、日詠クンが、どんなコトにも簡単には動じない日詠クンがさ、頭を悩ませてた恋敵って、この人なの?!」
『・・・いや、それは・・・』
これまた彼女にしては珍しく驚きを隠せない声色で私にそう問いかけていたけれど、
恋敵というワードがふさわしいのかわからないままであった私はすぐに反応できなかった。
「アハハハ、なんか笑える・・・・こんなにもおめでたい人に、アイツは振り回されてたワケね・・・」
こんなにもおめでたい人に
アイツは振り回されていた
こんなにもおめでたい人=森村医師
振り回されていたアイツ=ナオフミさん
そういえばそんな過去もあったっけ
あの頃の私は
ナオフミさんのすぐ傍にいた美咲さんの存在が気になって仕方がなくて
ナオフミさんのコトを信じてあげるコトができなかった
しかも直球勝負で感情をぶつけてくる森村医師にも
いつのまにか惹かれていた
ナオフミさん、森村医師
このふたりの間で
ワタシの恋心は風見鶏のようにグルグルと廻っていたっけ
でもそれももう
過去のコト
病院の屋上で
彼の手を
ナオフミさんの手を離した
あの時から
そのコトも
そして
ナオフミさんとの関係も
もう過去のコトになってしまった
「日詠クン、相変わらずなのかしらね・・・・」