ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
Hiei's eye カルテ27:僕はキミの希望になれるのか?


【Hiei's eye カルテ27:僕はキミの希望になれるのか?】




やりたいことが見つかって俺のもとから自立したいと言った伶菜と離れ離れになってから2年。


俺は相変わらず変わらない生活
・・・名古屋南桜総合病院で産科医師として多忙な日々を送っていた。


伶菜と息子の祐希がいなくなってやけに広く感じる自宅マンション。
そこに帰ることが再び少なくなっていて。
以前はあんなにもいろいろなものが入っていた冷蔵庫内も日持ちする物がいくつか入っている程度。


『たまには、人間らしい生活しないとな・・・』

俺は使い終わったマヨネーズを冷蔵庫に戻し、溜息をついてから出勤した。




今日の午前は産科外来で初診担当。
紹介状持参で来る妊婦が多いが、紹介状なしの患者には待ち時間が長くなることを覚悟して頂く上で初診を引き受けることになっている。


「日詠先生、紹介状なしの患者さん、来ているんですが・・・妊婦さんじゃないんですよ・・・子宮がん検診に来たって。」


ベテランの外来看護師が溜息混じりにその患者のものと思われる問診票を渡して来た。



『産科担当なんですけど、俺・・・ん?』


「婦人科初診のほうに回ってもらいましょう。」



問診票に目を落とし始めた俺の横で、看護師はほぼ決定事項のようにそう勧めながらデスクの上にある電話の受話器を手にとった。

それでも、自分の外来診察に受診したいと言ってきてくれたんだからと、受け取った問診票はとりあえず最後まで目を通す。



『受診希望理由・・・この度、ボストン出向を終えて、名古屋支社へ栄転となりましたので・・・どんな理由だよ・・・』


「日詠先生、笑ってます?」


『ええ、相変わらずだなって・・・この患者さん、僕、診ます。』



も~う日詠先生、相変わらずいい人過ぎますよ・・と呟きながら、その看護師は受話器を置き、待合室にいるであろうその患者のところへ向かった。





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