ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
Hiei's eye カルテ28:公私混同はダメなのか?


【Hiei's eye カルテ28:公私混同はダメなのか?】



自分が従事している名古屋南桜総合病院院長室から飛び出すように出て来て
白衣姿のまま電車に乗って駆け付けたのは、姉妹病院である名古屋城北総合病院。

そこの院長室に一足早く到着していた同僚の森村医師が
自分もこの病院で従事したいと大騒ぎしている。

ついでに、奥野さんまで面白そうな顔して俺を見てる。
ついこの間は、”伶菜ちゃんの件、あんたが黒幕なの?”って、これでもかというぐらい俺に怒っていたのにだ。

そんな彼らにいちいち構っている暇はない。
ここへ来た目的はたったひとつ。


その目的である人物が
すぐ手が届く場所にいる。


『お久しぶりです、坂田院長。そして、奥野さん・・・・』



目の前にいる小さな白衣姿のその人物が肩を震わせて始めた。
泣いているかのように見える肩の震え。


しばらく会っていなかった
言葉すら交わしていなかったんだ
彼女の肩を震わせているであろうその涙の理由がわからない
今、この場所で彼女が泣くことなんて予想していなかった
ただ驚くぐらいだろう・・って


でも、もし本当に泣いているのであれば
見て見ぬふりなんてもうできない俺は
追い抜きざまに彼女の頭に軽くポンと手を触れた
ひとりで泣くなという想いを込めて



『一足、遅れたな・・・ゴメンな・・・伶菜・・・』



だから、肩を震わせた彼女を見て
一度だけでなく、二度も別れた人であったけれど、
この時はどうしても他人行儀ではいられなかった
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