ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
電車がホームへ入り込もうとした際、
線路のポイント切り替え箇所にて電車全体が鈍い音をたてながら大きく揺れた。
その瞬間
『ひゃ/////』
私の心臓は他人にもそして彼にも聞こえてしまうぐらい踊ってしまった。
「おっ・・と・・」
彼特有のグレープフルーツミントの香りが
私の鼻をふわりとくすぐったと同時に
彼の顔が・・・私の肩の上に軽く乗ってしまったから。
今のこの状況
えっと・・・
ワタシから肩を貸したワケじゃない
電車がガタンッと揺れて
そんでもって、ナオフミさんも揺れて
だから
ナオフミさんがバランスを崩して
だから
ワタシからは何もしてないし
ヤマシイことなんか
何もしてないし・・・・
そうだよ
ワタシは何もして・・・
『あの、その、だから・・・○×△■*・・・・』
あーーワタシ
何でこんなにも言葉を噛んでしまうぐらい空回りしているんだろう?
ヤだ
顔まで赤くなってきちゃった
耳までも・・・
ワタシのこんなにも真っ赤な顔を見たら
きっと
ナオフミさんはこんなワタシを
からかうに違いない・・・
“顔、真っ赤だぞ!”とか
“アヒル口、健在!”とか
いや、そんなんじゃないかも
“肩に肉付き過ぎ!”とかも?!
さっきまでは彼とどう話をしてよいのか苦慮し続けていた私だったけれど
いきなり私達に襲い掛かってきたプチアクシデントが彼と私との久しぶりの会話のきっかけになってくれる気がした。
まさかの再会になっちゃったけれど
これからどうなるかわからないけれど
これは神様がくれたチャンスかも
もう一度彼と頑張れというチャンスを・・・
「申し訳ない・・・・」
恋人として過ごしていた時のように
ちょっぴりイジワルな笑みを浮かべながら私をからかう言葉をかけてくると思っていた私の耳を掠めた彼の呟き。
からかう言葉じゃなくても
こういう時、身体が触れてしまった時なんかは
“悪い・・”とか言ってもっと軽く謝られていたのに
その時の彼の呟きは
私の気のせいかもしれないけれど
・・・・凄く他人行儀に思えた。