ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
静かに立ち上がり、そう呟いたナオフミさん。
そして彼はドアの前に移動し、銀色の手すりにもたれかかって窓の外をじっと眺めていた。
さっき視線ぶつかった時のような力強い瞳は影を潜めてしまっていて。
その横顔も以前よりちょっぴり頬が痩せたように見えた。
そのせいで “全然ダメだな” という彼の言葉が
ひどく胸に突き刺さる。
何がダメなのかも
具体的にわからない状態なのに。
でも、それを本人に直接問い質す勇気もないなんとも弱い私は
ただ彼の横顔をじっと見つめることしかできなかった。
どう頑張ってもスキという気持ちを消し去ることができない彼の横顔を。
ガタン・・・・・ガタン・・・・・・・
ゆっくりと減速し始めた電車。
今度、停車したら私達は電車を降りなくてはならない。
椅子に腰掛けている私とドア付近の手すりにもたれかかりながら立っているナオフミさん。
ふたりの距離は手を伸ばしても届くキョリではない。
だから私は電車を降りてから自分はどう動いていいのかわからない。
ナオフミさんの後ろをただついていけばいいのか
それとも
自分から声をかけて話をしたほうがいいのか
もし話をするのならば
どう声をかけていいのか
今にも電車が駅に到着しそうな状態なのに
そんなことが頭を過ぎり
私は身動きがとれないまま立ち上がることすらできなかった。
ガタッン・・・・・プシュー!!!!!!
「南桜病院前、南桜病院前です!ご乗車ありがとうございました。南桜病院へは2番出口をご利用下さい。」
ドアが開いた瞬間、白衣の裾をなびかせたナオフミさんがこっちのほうへ早足で歩み寄っていた。
そんな彼の瞳は再び力強さを取り戻していて。
グイッ!!!!!!!
「行くぞ!!!!!!伶菜!!!!!!」
なにかを吹っ切ったかのように・・・