ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
Hiei's eye カルテ29:空想よりも先に、前に、動くんだ


【Hiei's eye カルテ29:空想よりも先に、前に、動くんだ】





白衣姿の伶菜の手を引いて、同じく白衣姿の俺が向かったのは
さっきまでいた名古屋城北総合病院の最寄り駅。

さっき彼女の手を掴んだ瞬間よりも
今は明らかに緩い力で彼女の手を引いている。

その手を離したのは、改札前の自動券売機で切符を購入しようとした時に
俺からではなく、俺よりも先に切符を購入しようとした伶菜から。



手から消えた彼女の体温がもう恋しい
さっき、院長室を出てくる時に戸惑う彼女を感じていたのに・・だ


そんな俺を気にかけていない様子の彼女は券売機の真上に掲げてある路線図に書き込まれた駅名と運賃をじっと見つめている。

隣県の駅、終点の駅まで書き込まれている情報過多な路線図運賃表。
彼女はそれを必死に見上げて降車駅を探している。


『はい、これ。』


既に切符の料金を知っている俺はまだ駅名を探している彼女の横で購入した切符を彼女に差し出す。


いつの間に・・・というような顔で、会釈ひとつしてからその切符を受け取る彼女。
以前だったら ”買ってくれていたんだ、ありがとう、ナオフミさん!”と言い、にこにこしながら受け取ってくれただろう彼女のその反応。
その反応からも感じた彼女と俺の心の距離。



城北病院院長室で感じた彼女の戸惑いは
俺の気のせいではなかった・・か





ビューン///ビューン///ビューン!!!!



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