ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


春の温かい陽気
それとも電車特有の揺れ
それらによるものと思われる眠気は感じるものの、
どこでもいつでも眠ることができる俺が寝落ちまでに至らない

少し隙間をあけて隣に座っている伶菜が今、何を想っているのか
それが気になるからだ



でも、黙っていることに対して、なにか話さなきゃとか気を遣わせたくない
だからわざと腕組みしながら寝息を立てて狸寝入りをする
周囲が白衣姿の俺達を見てざわつくのも無視して

でも、そんな時間も身体が大きく傾くような電車の大きな揺れ、
それに伴う伶菜による反射的な小さな叫び声
それらによって、俺は狸寝入りをし続けることが難しかった。

しかも、腕組みしていたせいで、伶菜の肩に自分の側頭部が触れてしまう想定外のアクシデント発生。



「あの、その、だから・・・○×△■*・・・・」


彼女は何もしていないのに、なぜか一生懸命言い訳をしようとして言葉を噛んでいる。

アクシデント発生源は俺のせいなのに、
なんで彼女が言い訳している?
誰に言い訳しているんだろう?

周囲にいる乗客?
それとも
今、目の前にはいないけれど、俺との関係を誤解されたくないような相手・・か?


『申し訳ない・・・・』


もし後者ならば、多分、謝るべきだろうな

俺はなど彼女との関係を
恋人同士とか婚約者などと
誤解されていいような関係ではないのだから



『・・・荷物、持と・・持ちましょうか?もうすぐ駅に着きますから。』


本当はその関係を
誤解ではなく現実にしたかったのだけれど
それは過去の話
今はただの、同僚なんだから・・・


「いえ、結構です。そんなに重くないですから。」


俺の誘いに何かを割り切ったような笑顔ではっきりとそう答えた彼女。




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