ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来






ナオフミさんは私の言葉を遮るようにそう呟きながら、今にも駅員さんに抱っこされそうになっていた私の身体を強く引き寄せた。

“大切な人”

急に穏やかになった彼の声によって紡がれたその言葉で、顔だけでなく、胸までもが熱くなってしまった私。



「失礼致しました。お客さまのお連れ様だったんですね。今、救急車を依頼します。加藤さん、救急車呼ん」


「駅員さん、救急隊の依頼はいりません。私は医師ですから・・」


そんな私をよそに
ナオフミさんと駅員さんの間では
救急車依頼の話が持ち上がってたワケで。


しかも、ナオフミさんってば
なんだか真剣な眼差しで駅員さんと向き合ってる


というか

私、急病でもなんでもなくて
私、ナオフミさんにお姫様抱っこされてるのがあまりにも心地よくてついついこのままでいただけなんだけど・・・



「お医者様ですか、じゃあ安心ですね。では、改札が混雑していますので、こちらの駅員通用口をお通り下さい。」


「ありがとうございます。」



というか

ナオフミさんだって
私が急病なんかじゃないコトちゃんとわかってるのに



なんで“急病じゃない”って否定しないばかりじゃなくて
なんで“私は医師ですから”なんて言っちゃうのかな?

いかにも私が急病人みたい・・・




「お大事にして下さいね!」



そして私はナオフミさんにお姫さま抱っこされたまま
人目が少ない駅員通用口から外へ出た。

更に湿り気を含み、皺々になった切符を右手に握ったまま・・・・・?!




『あっ、切符ぅ~』



ヤバイ・・今度こそ
心地いいなんていってられない
無賃乗車と思われたら大変だし・・・

私はあまりにも情けない声をあげながら、駅員さんに切符を渡しに行こうと大急ぎでナオフミさんの腕から自分の足を下ろそうとした。




でも・・・・



グイッ!!!!!






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