ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「しー、ほらっ、始まったみたいよ、、ウヒヒ・・」
なんだか楽しくて仕方がないような福本さん。
彼女の耳は会議室のドアにピッタリとくっついている。
私も彼女に導かれるがままそのドアに自分の左耳をくっつけた。
なにがなんだかわからないまま。
「日詠先生。彼女が高梨さんですね。」
「ええ。彼女です。」
ついさっきと同じ質問が投げかけられた。
さっきとは異なる女性の声で。
その質問にも至って冷静そうな口ぶりで答える日詠先生の声。
「なんで・・・なんで彼女なんですか?」
「・・・・・・・・・」
「どうして、私じゃいけないんですか?」
ここって病院の会議室だと思うけど
なんだかプライベートな会話が繰りひろげられているようで・・・
しかも席を外している私までもその会話の中に登場していて
日詠先生の恋人の座を守るのって
結構大変なのかも・・・・
妹として同居していたあの頃のほうが
お気楽でよかったかも・・・・
「私のほうが経験があります。産科の患者のカウンセリングもちゃんと手がけています。でも彼女は臨床心理士になったばかり。それなのになぜ?」
荒らげた声が会議室内に響いた。
私の暴走気味な妄想を掻き消すには充分な程の大きな声が。
「・・・臨床心理士としての経験なら、もちろん中谷さんのほうがある。」
「じゃあなぜ・・・・?」
日詠先生にすがるように問いかける女性の声。
・・・・おそらく中谷さん。
この人は日詠先生の恋人の座を狙っているとかじゃない
そんな軽い気持ちで訴えてるんじゃない
臨床心理士として遺伝相談チームの一員として従事したいと懇願してるんだ
臨床心理士1年生の私ではなく
自分が従事したい・・と・・・・
それぐらいこの遺伝相談チームは
やりがいのある場所であるんだ、きっと
でもそれだけ難しい場所なんだ、きっと・・・
それなのに
臨床心理士としての経験がゼロな私が
こんなところに居てもいいのかな?
どれだけ心理学の知識を頭の中に入れても
患者さんの心は知識だけでは知ることはできない
患者さんの心の声に耳を傾けることの積み重ねがこの仕事には必要不可欠
私にはその経験がまだない
だから本当にいいのかな?
私で・・・