ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「はい?日詠先生?今、なんて?」
「・・・自分自身が・・僕が彼女に・・・高梨伶菜にずっと守られてきた。だから彼女が必要・・・ただそれだけ。」
“僕が彼女に・・・・守られてきた・・・・”
日詠先生はそう言った
“私が彼に・・・・守られてきた・・・・”
私はずっとそう思ってきた
どんなに離れていても
頑張れる力を与え続けてくれていた彼という存在を想い起こす度にいつも・・・
そうやって彼は私を守っていてくれた
それなのに
私が彼をずっと守っていたなんて
そんなの
全然信じられない・・・・
「あの時も・・・・こんな風にドア越しだったわね。伶菜ちゃんとナオフミくん。」
私と向かい合わせな格好でドアに耳をくっつけて会議室内の様子を窺っていた福本さんが穏やかな笑みを浮かべながらそう呟いた。
『あの時・・・ですか?』
「そう、ナオフミくんが妊娠9ケ月の伶菜ちゃんに東京へ行くように告げた時。」
それは産科の外来診察室だった
その頃、私は妊婦、ナオフミさんこと日詠先生は私の主治医で
自分はお腹の中の子を取り上げることはできないと告げ、診察室から姿を消してしまった彼
その時の私はあまりにも現実感がなくって、意識を失ってしまったっけ
「あの時、私と伶菜ちゃんが話しているのを。ナオフミくん、ドア越しに目を閉じて聞いていたらしいの。」
『やっぱりいたんだ。ナオフミさん。ドアの向こうに。』
「そう。伶菜ちゃんが東京で頑張るからって言ったのをドア越しに聞いて、肩を震わせながら静かに泣き崩れたって奥野先生が教えてくれたわ。」
あの時やっぱり
ナオフミさん、いや日詠先生は泣いてたんだ。
「伶菜ちゃんが彼にちゃんとメスを握ってって訴えかけた後、ナオフミくんの目が生き返ったこともね。あんな日詠クン、初めてみたわって切なそうな顔をして溜息ついてたのよ。奥野先生。」
『奥野先生・・・・』
「早いものね・・あの時からもう4年も経つのね。そして、伶菜ちゃんがナオフミくんのところを離れて3年。受験勉強して大学院に入って、臨床心理士の資格まで取って。よく頑張ってるわ。」
『そんな・・・大したことないです。』
母親のような穏やかな笑みを浮かべながら私にそう語りかけて下さった福本さん。
なんだか照れくさくて、上手く返事をすることができなかった。