ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
見上げたその先には
彼のちょっぴり困った顔。
「ナオフミく、あっ、日詠センセ。先生の休みの予定って明日の17時までになってましたけど。1週間とか休むのならば長期休暇届を提出してから出発して下さいね~。」
いつのまにか会議室内に入ってきていた福本さんのかなり意地悪な声かけにナオフミさん、いや日詠先生は不機嫌そうな顔を覗かせた。
「いらないです。」
「はっ?日詠先生、いいんですか?」
今度は早川遺伝相談室長が彼に聞き返した。
「長期休暇なんていらない。過去2回、長期休暇とろうとして、呼び戻されたし。」
福本さんに対してだけでなく、早川室長にもそんな返事をした日詠先生。
どうやら彼はチームの皆さんにも心を許しているようで。
「福ちゃんってば、日詠先生のコト、そんなに酷使してるの?」
「そんなつもりはないけど、ナオフミくん、伶菜が頑張ってるから俺もしっかりやらねーとって・・・・・」
「うわー、愛ね。高梨センセと詩織さんを思いだすわ。」
「そうでしょ早ちゃん。見てるこっちが胸キュンキュンくるよね~♪あの頃を思い出して・・」
恋話をしている女子高生のように盛り上がる福本さんと早川室長。
どうやら福本さんだけではなく、早川室長も生前の父と母を知っていた様子。
そんな事実を知った私はなんだか心強く感じた。
父と母が間接的に私を守ってくれているような気がして。
「ったく、しゃべりすぎだな。」
『えっ?』
「伶菜じゃない・・・さ。行くぞ。」
『えっ、は、ハイ。』
私は掴まれていた右手を再び強く引かれた。
「そうそうナオフミくん、早く行かないと、森村センセだっけ?整形外科の・・・・伶菜ちゃんのコト、物凄い勢いで追っかけてくるわよ。」
「それだけは、勘弁。」
そう呟きながら、日詠先生は私の右手を引きながらとうとう会議室を後にしてしまった。