ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
連れて帰るって言ってたけど
私、このままどうなるんだろう?
先輩として指導するとも言っていたけど
日詠先生の自宅で、なのかな?
“これを覚えないとご飯食べさせないから”
“ここを口頭で説明できないと寝かさないから”とか
もしかして、日詠先生ってスパルタ指導しちゃったり?!
臨床心理士初日で
今日は職場の挨拶回りとかで一日が終わると思っていたのに・・・
もしかして、早速スパルタ指導で一日が終わるの?
しかも祐希を保育園に預けているから迎えにいかなきゃいけないのに
課題をできなくて身動きが取れなかったら
祐希、迎えにいけないじゃん
参考書とか今、手元にないし
どうーしよう・・・・
でも日詠先生のスパルタってどんな雰囲気なんだろ?
やっぱりクールな彼らしく突き放す感じなのかな?
それとも意外と熱血系だったりして
なんかドキドキしちゃう・・・・
どっちでもいいや・・・・日詠先生なら///
あーダメダメ
こんな時に余計なコト考えちゃ・・・
祐希のためにも迎えにいく時間を確保できるように頑張らなきゃ/////
「さ、行くかな・・・・」
『・・・・・・』
「乗れな。」
『は、はい・・』
すっかり自分の世界にどっぷりと浸かっていた私。
ふと気が付くと、彼に手を引かれたまま駐車場にいた。
変わらない彼のお気に入りのブルーの国産ミニワゴン。
車内の香りも、全然変わってなくて。
「こっちおいで。」
一緒に暮らしていた頃の習慣で、つい後部座席に乗り込もうとしていた私を彼は優しい声で呼んだ。
助手席を指差しながら。
『は、はい!!!!!!』
私は身体をビクつかせながら慌てて助手席に乗り込んだ。
ここに座るのは本当に久しぶり。
浜名湖までのドライブ以来だ。
凄く緊張する。
懐かしい彼との距離感。
ここから見える横顔。
眩しい光を避けるように時折目を細める。
あの頃と変わらず今でもドキドキが止まらない。
一緒に暮らしていたのが嘘みたいに落ち着かない。
そんな私を感じていたのか、日詠先生は黙ったまま車を走らせていた。
なぜか日詠先生の自宅マンションのある方角とは反対方向へ。
日詠先生は桜並木のトンネルを抜けて、見晴らしのいい小高い丘にある駐車場に車を停めた。
そして彼はじっと私を見つめた後に何も語ることなくゆっくりと歩き始めた。
その左手にはいつのまにかガーベラの花束が携えられていた。
『ここって・・・』
初めてみた反対側からの景色。
そこは父と母が安らかに眠る墓地。
「ここに来れば、きっと背中を押してもらえる気がしてな。」