ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
ザクザクザクッ・・・
・・・・・サクサクサクッ・・・・
今度は砂と靴が擦れる音が交互に響いた。
それらは彼と私が前に進みながら奏でた音。
「ボール行っちゃった!!!!!!!!」
遠くから聞こえてきた男の子の声にナオフミさんは足を止め、勢いよく転がってきた青色のボールを拾い上げてからその場にしゃがみこんだ。
「ボール・・ボール・・・・」
「あっ、あのおじちゃんがひろった!」
どんどんこっちへ近付いてくる男の子2人組の声とその姿。
そして彼らは地面にしゃがみこんでいるナオフミさんの前に立ち止まった。
「ゆうくん、おじちゃんにありがとっていおう!」
「そうだね、ボール、ありがと・・・・おじちゃ」
一人の男の子が途中で言葉を発するのを止めた。
いや、正確に言うと“止まってしまった”
その男の子と向かい合わせになったナオフミさんの表情はここからは窺うことはできないままだった。
男の子の驚いた表情とナオフミさんの背中しか見えていなかった私。
男の子は私の存在を気にもとめられないぐらいナオフミさんをじっと見つめていた。
そしてナオフミさんから男の子に差し出された青いボール。
それなのに男の子は両手を前に差し出すことができなかった。
「大切にする・・・キミとキミのお母さんを。」
青いボールを差し出したまま男の子に静かな口調でそう語りかけたナオフミさん。
その後姿が歪んでみえた。
目に溜まった涙のせいで。
それでも私はちゃんと彼を見守らなきゃいけない
いや、目の前の”彼ら”のやりとりを。
「だから少しずつでもいい。それでもいいから教えてくれないか?キミのコト・・・それとキミのお母さんのコトを。」
でも涙が溢れそうになった。
それを堪えるのに必死になった私。
「キミじゃないよ・・・・」
ようやくボールを受け取ろうと両手を前に差し出した男の子がそう強く否定をした。
「ボク、キミってなまえじゃないよ・・・ゆうきだよ・・・・・・パパ。」