ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
ふたりの間には笑顔は一切なく、ただ緊張感だけが漂っているように思われた。
まるで他人同士の会話のように。
その直後、ナオフミさんは祐希の靴を揃えるために早紀さんに背を向けて再びしゃがみ込んでしまった。
なにも語ることなく。
「あっ、お、鍋に火をかけたままだったわ。」
早紀さんもスリッパの音をパタパタと慌しく立てながら玄関を後にしてしまった。
その後姿に胸がズキっと痛んだ。
ナオフミさんと早紀さん
息子と母親
確かに遠い昔、このふたりの間には、他人には到底理解できない親子間での葛藤があったんだと思う。
乳児期に母から身体的虐待を受けた息子
子育ても“循環器内科医師を目指す”という夢を諦めた母親
母から手放され、見ず知らずの夫婦に実の子のように育てられた息子
母親とは何かを見つめ直すだけの日々を送った母親
育ての父の死をきっかけに育ての母からも手放され、彼らの友人夫婦に引き取られた息子
過去を打ち明けることができないまま子育てに再挑戦しようとした母親
育ての父に憧れ産婦人科医師を志した息子
そんな息子を静かに見守りながら、
息子への罪滅ぼしのため、そして自分のように乳幼児虐待をする母親を一人でも減らすために・・・・密かに小児科医師になる勉強をし続けた母親
きっとふたりしか知りえないココロの中の葛藤があったに違いない
でも、そんなふたりだから、またちゃんと繋がって欲しい
でもどうやったら・・・
「伶菜クン、尚史を信じてやってくれないか。」
『日詠先生・・・』