ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
遠くのほうから聞こえてきたのは入江さんの声。
ゴメンナサイ、今は、アナタにも構っていられません!と彼の声が聞こえなかったフリをして足を止めるコトなく先を急いだ。
そして、浜松駅までの矢印看板だけを頼りに走り続けた私。
日曜日の早朝ということもあってか、駅のコンコースは人通りが少なく、頬をかすめる空気はひんやりとしていた。
『つ、着いた!』
思わず声を上げた私。
でも、着いたと思った改札口は在来線専用口。
『ハァハァハァ、し、新幹線、どこですか?』
息を切らせながら、私は改札口に立っていた駅員さんに問いかけた。
「えっ?新幹線?? 改札口ですか?」
そうだよッ!それ以外何聞くよ!
といいたい気持ちをグッと押さえたけれど、つい駅員さんを睨んでしまった。
「あっちです・・・・」
私のそんな態度に驚いたのか、駅員さんが若干肩を竦めながら左の方を指さす。
それを見た瞬間、お礼も言わないまま再び走り始めた私。
それでも途中、時刻を示す電光掲示板に目が行ってしまった。
あと3分?!
新幹線の改札口、どこ?お兄ちゃんは、どこ?
あっ、改札口、あった!
ピンポーン、ピンポーン、、ピンポーン!!!!!
ああ
あ~あ
「お客さん、切符は?」
駅員さんが大きな声で私に問いかけながらゆっくりと歩み寄っててくる。
切符なんて買ってない
そんな時間なんてない
『お願い、乗らないから、通して。彼が、行っちゃうの・・・』
自動改札のゲートが閉まったままそれ以上前へ進めない私の情けない叫び声。
「ハイハイ、入場券、買って下さいね。買う時間がないなら証明書あげるけど。」
『ああ、もう、その証明書・・・それ下さい!あとで払いますから!!!』
冷ややかな口調でそう言いながらゲートの前に立ち憚った駅員さんに、手を差し出す。
「ちょっと待っててね。今、持って来るから。」
そう言い残し、自動改札に隣接している事務所に向かって歩き始めた駅員さん。
駅員さん、証明書ってモノがあるなら、早く言ってよ!
そしたら間違ってもこんな風に恥ずかしい想いをする前にそれを貰いに行ったのに
駅員さん、せめて走って
時間ないんだから
“間もなく、6時33分発こだま128号新大阪行きが到着致します。危ないですから白線の後ろまで下がってお待ちください。”
かなり急いでいて気持ちにまったく余裕のない私の耳にも入ってきたアナウンス。
それでもまだ、目の前のゲートは一向に開く気配もなく、証明書を取りに行ってくれている駅員さんの姿も見えず
ああ、もう
お兄ちゃんも見つけ出せていないのに
ああ、もうこのまま会えないままなの?
「伶菜?」
えっ?
「・・・・伶菜なのか?」