ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
彼特有の、変わらないグレープフルーツミントの優しい香り。
「声に出して読み聞かせて欲しい。」
背中から抱きしめられた状態で目の前には一通の手紙が差し出された。
日詠尚史様
住所も郵便局の消印もなく彼の名前が記載されただけの封筒。
それを受け取ってしまった私。
ほんの少しだけ湿り気が感じられるその封筒。
おそらくかなり古いもの。
きっと大切な手紙。
『これ・・・読んでもいいの?』
「ああ・・・」
耳元で小さく返事をしてくれた彼。
そして私は封を開けるためにそっと封筒を裏返した。
そこには見覚えのある筆跡。
”高梨詩織”
母の筆跡。
母の名前。
『本当にいいの?』
「ああ・・・読んで欲しい。」
彼はそう言って、私を背中から抱きしめたまま私の頭の右側に彼の頬をそっとくっつけた。
彼の頬の温度を感じながら、私は開封済みの封筒の中から手紙を破らないように気をつけながら手紙を開いた。
そして彼が望んだように声に出して
『尚史へ・・・・』
そこに綴られた文字を読み始めた。
『この手紙をあなたが手にとる時には、私はもうこの世にはいないでしょう。本当はあなたに会ってちゃんと話しておきたかった。けれども、私の命はもう長くはありません・・・・・』
おそらく母が病院のベッド上で癌と闘病しながら綴った文
母のすぐ傍で私はできる限り付き添っていたのに
母がこのような手紙を綴っていたのは知らなかった
きっと日詠先生ご夫妻に託していたものだろう
いつかナオフミさんへ渡して欲しいと・・・
『だから今の想いを手紙に認めることにしました。』
体の痛みはかなり強かったはず
ところどころ、字が歪んでいる
母がナオフミさん宛に綴った手紙
『尚史・・・私との約束を守ってくれてありがとう。そして伶菜と再び出逢ってくれてありがとう。
尚史と伶菜。あなたにも伶菜にも伝えていなかったけれど』
ナオフミさんだけでなく、私にも伝えられていなかったコト。
私はつい声に出さないままその先を読み進めてしまった。