ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



黙読し終えてしまった。

ちゃんと声に出して読んであげなきゃと思うんだけど、
涙で文字が更に歪んで見えて、嗚咽までも上がってきて
もう声を出して読むことができなかった。


幼い頃、虐待で心身ともに傷ついていただろうナオフミさん。
そんな彼が私の両親にもちゃんと愛されていた証拠。

まだ幼かった私が知らなかった証拠。
それが今、私の手の中にある。

途中で声に出して読まなくなった私なのに
“ちゃんと読み聴かせて”と急かさなかった彼。


読み聞かせてって私に頼んだのは
きっと私に気を遣わせることなく読ませてあげたいという彼の気持ちからなんだと
この時に気がついた。

私にも母の本当の気持ちを伝えてあげたいという彼の心遣いまでも感じられて。


だから私は彼に謝らなかった。
最後までちゃんと声に出して読み聞かせてあげられなかったことを。



『・・・こんなラブレター・・・』



“私はあなたと一緒に生きることができて幸せでした。そしてひとりの人間としていつまでもあなたのことを愛しく思っています。いつまでも・・・・”



それらはきっとナオフミさんが幼い頃から欲しがっていた言葉。

お母さんが天国へ逝ってからもう結構な時間が経っているのに
お母さんは今でもなお
ナオフミさんにも大切なものを与えてくれている

お母さんには本当に敵わないよ
今でも
そしてきっと
これからも・・・



『・・・お母さんには、敵わないなあ・・・』



でも彼はそう呟いた私をさらに強く抱きしめた。



「・・・嬉しかった。」


『この手紙・・・・』



彼の腕の中。
至近距離で交わした言葉。




「手紙もだけど・・・お前の言葉も同じくらい、嬉しかった。」


『私、の・・・???』




どんな言葉かわからないままで。
ナオフミさんの表情を伺おうとしても、背中から強く抱きしめられていて身動きが取れなかった。




「明日の朝、味噌汁の作り方、教えて欲しいって・・・・ヤツ。」


ついさっき余計なこと言ったかもって後悔してた言葉なのに。



「お前の、母さんを大切に想ってくれているその気持ちが嬉しかった。」


なのにナオフミさんはちゃんとわかってくれていたみたいで。



この人に出逢えたこと
こんなにも温かい人に出逢えたこと
そして
こんなにもわかりあえる人に出逢えたこと

それは奇跡なんかじゃなくて
用意周到に準備されていたかのように思えてきた


自分の未熟さから何度も自ら命を絶とうとしたけれど
この人に出会ったことで死ぬことを諦めた私

この人との出逢い
日詠尚史という人との出逢い

それはきっと
奇跡なんかじゃない
偶然なんかでもない

そう思えてくるんだ・・・・






グラッ!!!!!







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