ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


「オイ・・・大丈夫か?・・・伶菜!」


もう間に合わないと思った私は魂が抜き取られたモヌケの殻状態。
全くといっていいほど足に力が入らず、自分のカラダがゆっくりと下方へ沈んでいくのに気がついていながらもどうしようもできない自分がいた。


ガシャン!



「入場券はちゃんと購入しましょうね。ハイ!伶菜さん!」

自動改札のゲートが開いた瞬間にその声が聞こえてきて、背後から両脇を抱えられて立ち上がされた私。


「ひかり、40分発でしたよ!あと5分はホテルでのんびりできたのに・・」


前方から聞こえてきた溜息混じりの声。
背後から支えられていたはずの私のカラダはいつの間にか前方から支えられていた。
しかも目の前からはコーヒーのいい香りとチキンの香ばしいニオイが漂ってくる。


「悪いな、見間違えたんだな。オレ。」

「ワザとでしょ?」

「まあね。」

お兄ちゃんと入江さんのいつもの軽快なやりとり。


よかった、険悪なムードのままじゃなかったんだ
そうだよね、お兄ちゃんと入江さん、付き合い長いんだもん


「ふーん。そういえばさっき、高島さんがコンコースの真ん中辺りにいましたよ。入江さん、探されてるんじゃないですか?」

「えっ?!」

お兄ちゃんの問いかけに動揺している様子の入江さん。


「行ったほうがいいんじゃないですか?」

「そ、そうだな・・・そうだよ、うん、そうだ。じゃ、伶菜さん、またココに迎えに来るから。日詠を見送ったら、ココに戻ってきて下さいね。ココね、ココ!」

入江さんの動揺ぶりは明らかで
後ずさりしながら、駆け足でコンコースの中央方向へ走り去ってしまった。



「ははっ」


顔をクシャクシャにしながら豪快に笑った彼。
なんでそんなにも笑うのか今ひとつ理解してない私。


「高島さんってスゴイな、あの入江さんがあそこまで彼女の存在を警戒してるなんてな・・・こんな時間に駅のコンコースになんかいるわけないのに。」



???
いるわけないって?



『えっ。今の、嘘?』

「ああ。人をあれだけ慌てさせたんだから・・・それに伶菜に渡し忘れたモノがあるしな。」


してやったりと言わんばかりにニヤリとイタズラっぽい笑みを浮かべた彼。


???
私に、渡し忘れたモノ

なんだろう?



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