ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


「せっかく入江さんが入場券、買ってくれたし、ホームまで一緒に来るか?」

『・・・うん。』


彼が私に渡し忘れモノが今ひとつ思い浮かばない私は、登り用のエスカレーターに乗ろうとしている彼の声かけに対してうわの空状態で『うん』としか反応できていなかったものの、カラダはちゃんと彼の後を追っていた。


なんだろう?
ダメだ~思いっきりダッシュしてきたから
お腹ぺこぺこで何にも思いつかないや

諦めモードの私はそれでもちゃんと彼の後を追っていて、いつの間にか名古屋方面の新幹線ホーム上に到着していた。


「コレ、渡しとくから・・・」


彼はというと6号車のドアの前で立ち止まり、そう言いながら私のほうを向いて、グッと握った右手の拳を差し出していた。

突然、自分の目の前に出された大きな拳を凝視する私。

でも本当は
お腹ぺこぺこだから、彼の左手にぶら下がってる、コーヒーとチキンらしきモノが欲しいんです
しかも、バルサミコ酢の香りまでしてくるッ
ズバリ、バルサミコチキンサンドとみたッ!

お腹すいたなぁ~


嗅覚を介して彼の左手にぶら下がっていた紙袋の中味を推察していた私の視線。
それが彼の右手の拳からコーヒーショップのロゴが印刷されているその紙袋のほうへ移そうとしたその瞬間。


『・・・んンン?!』


か、顔から火、出そう


クールで口数の少ない
どちらかと言えば公の場所とかでも目立たないようにしている
そんなカレが
こんなところで
そんなことするなんて・・・



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