ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
クスッ!
また笑われた?!
今日何度目?!
「お前、バルサミコチキンサンドに気を取られてたろ?だからちょっと驚かせてみた。」
『・・・・・・・・・・』
驚かせるって
こんな公の場所で突然、交通事故みたいなキスされちゃったら
驚く・・・そんなの通り越してすっかり骨抜き状態になっちゃった
「というのは冗談で・・・」
冗談って
どうしてくれるんですかッ
こんなにワタシをヘタレにしてくれちゃって
ヒューン、ヒューン、、ヒューン、、、ヒューン、、、ゴオオオオオ!!!!
突然の轟音がヘタレになってしまっていた私の耳を襲う。
それは、ホームに停車しているひかり号の向こう側をのぞみ号が高速で通過した音。
そんな私とは対照的に
やっぱり涼しい顔しながらおもむろに口を開こうとしていた彼。
「ハイ、コレ。ないと帰ってから困るだろッ?」
『へっ?』
帰ってから困るって?
すっかりアタマが働かない私はマヌケな声をあげながら首を傾げる。
そして再度、私の目の前に差し出された彼の右手の拳。
今度こそ彼の拳の真下に自分の左手を差し出すと
彼の右手の拳から、なんだかひんやりとしたモノが落ちてきていた。
自分の左手の、手のひらの上には
ややくすんだ銀色の見覚えのある鍵と
鍵とは対照的なぐらい光沢のある銀色の小さなハーモニカが
細いチェーンで繋がれた状態で載せられていた。
『・・・キーホルダー?』
あれ?
あのボトルシップのキーホルダーは?
小さなヨットが中に入ってたボトルシップのキーホルダー
それは色違いだったけれど、彼とお揃いだったモノ
そのキーホルダーが繋がれていた合鍵は
私は昨日、病院の屋上で、不意に落としてしまい彼に拾われていたモノ
だから本当は
ボトルシップのキーホルダーはどこやっちゃったの?
なんで外しちゃったの?って聴きたかった。
でも、彼に返してしまった合鍵に取り付けるキーホルダーに対して
私はどうこう言う権利はない
だから聴けなかった。
でも、やっぱり寂しい
彼と祐希の3人で東京から戻ってきた日に
あのボトルシップのキーホルダーのついた合鍵を受け取ってから
私と彼の距離は縮まっていった
そう思ってたから・・・
「そう。今朝、駅の売店で、時間のない中、目に付いて買っちゃったんだ・・・こんなに小さいのに、よくできてるだろ?音もちゃんと出るらしいぞ。楽器メーカーが作ったモノらしいんだ!」
彼は、珍しくちょっぴり得意気にそう言いながら
私の左手の手のひらに載っていたその小さなハーモニカのキーホルダーをそっと手に取り、それを吹くマネをして、すぐにまた私の左手の上に載せてくれた。