ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


そんな意地悪な俺をじっと見つめて、きょとんとしている伶菜を見て
自分が彼女に渡し忘れていたものがあったことを想い出した。


『せっかく入江さんが入場券、買ってくれたし、ホームまで一緒に来るか?』

「・・・うん。」


渡し忘れたものを餌に、彼女と一緒に居られる時間を手に入れようとする俺。
そんなせこい真似をする俺に気がついているのかいないのか
伶菜の返事はふたつ返事で。
しかも、俺の手にぶらさがっているチキンサンドの入った紙袋のほうをじっとみている。


そのせいで俺は
一旦彼女の前に差し出した ”渡し忘れていたもの” をすんなりと手渡すことをやめて

「・・・んンン??」

発車時刻が迫り、人が集まり始めた新幹線のホームで

「な、な、なあ?!」

彼女からまともな言葉を奪い、そして

「だから、だから、き、キ、スう?!」

彼女の唇までもを奪う意地悪をした。



今まで駅のホームとかで、恋人同士がキスをしている姿を見かけると
こんなとこでそんなことするなよって、視線を逸らしながら溜息をついていた自分なのに
今は周囲の人達に溜息をつかせてしまうようなことをしている

いつもの自分とは異なる・・・そんな自分がおかしくて
おかしい自分に驚いてくれている伶菜もおかしく、そして可愛くて

『お前、バルサミコチキンサンドに気を取られてたろ?だからちょっと驚かせてみた。』

自分の想いがどうか顔に出てしまわないように、照れ隠しの言葉を紡がずにはいられなかった。



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