ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
Reina's eye ケース4:彼とは異なる帰り道


【Reina's eye ケース4:彼とは異なる帰り道】



「さっ、乗って! っといっても、コレ、日詠の車なんだけどねっ。」


駅のホームで入江さんと一緒になった私は彼とホテルへ戻った。
そして部屋から荷物を持ち出し、フロントにカードキーを返却し終え、ロビーで待っていてくれた入江さんともにホテルの地下駐車場に向かった。


もうすっかり見慣れた、メタリックブルーの国産5ナンバーのミニワゴン。
最初、コレを見た時は、日詠先生はなんて庶民的な車に乗ってるんだろう・・って驚いたっけ。


そんなことがふっとアタマを過ぎり、ついつい思い出し笑いをしてしまった私。
そしていつものようにチャイルドシート横の後部座席に乗り込んだ。



「伶菜さん、後ろの席でもいいの?助手席空いてるけど。」

気を遣ってくれたのか入江さんは後ろを振り返りながらそう声をかけてくれた。


『このままでいいです。私、いつもはココが指定席ですからッ。』


入江さん、せっかく勧めてくれたのに、ゴメンなサイ

昨日、助手席から見たお兄ちゃんの横顔を
暫く忘れたくないから

だから、助手席には乗れないんです


「そっか。祐希くんと一緒に乗ればそうなるよね。」

私の返事に彼なりの解釈をしてニッコリと笑顔を返してくれた入江さん。


「じゃ、行きましょうか!」

『ハイ!』


そして私達は名古屋へ戻るために車を走らせた。
車は地下駐車場から地上へと繋がる通路をゆっくりと走り、地上に到達した瞬間。
私はさっきお兄ちゃんを見送った時よりも更に高く昇っていた太陽の光に目を凝らした。


そういえば、お兄ちゃんと祐希と3人で東京から帰ってくる時
一緒に暮らさないかって言われて、どう返事をしたらいいのかわからなくて
車の中で彼と何を喋っていいのかわからなかったりもして
すごい戸惑ってた

今から思えば凄い懐かしい

あの時は彼とこんな風になるなんて
考えられなかったな

ただただ、これから
日詠先生と、そして産まれてから初めて病院以外の所で生活をする祐希との・・・どのような生活が待ってるのか
兄と妹という関係で
彼とどのような生活を送っていくのか

そんなコトばかり考えていた気がする
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