ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


そして、祐希が眠りについたことによって母親という立場から解放された後、
主婦として “引越しの後片付け” をもやり終えた私は
ようやく寝心地がしっくりくるダブルベッドに横になり、
うっすらと灯っているオレンジ色の豆球の明かりをじっと見つめながら胸に手を当てたまま眠りについた。


この2日間、いろいろなことがありすぎて
心身ともに疲れきっていた私はかなり深く眠っていたらしく




ピンポーン!



眠っていた私の耳に突然聞こえてきた玄関のチャイム音で目が覚めた。
遮光性の高いカーテンを閉めたままの寝室内は暗く、私は慌てて目覚まし時計を手に取って時刻を確認。


『8時半?!・・・祐希は?』


私は大慌てでダブルベッドに隣接してあるベビーベッドの中にいるはずの祐希を探した。
彼はお気に入りのタオルに描かれている動物達を丁寧に指差ししながらひとりで遊んでいた。

『いた。よかった。・・・朝ごはん作らなきゃ!』

祐希の姿も確認した私は、ひんやりとした寝室内であるにも関わらず、勢いよく布団を捲りあげ、ベッドから立ちあがった。

その瞬間


ピンポーン!



再度鳴り響いた玄関のチャイム音。

朝寝坊したことに驚き、いち早く朝食を作らなくてはという焦りから、さっき私を起こしてくれたチャイム音の存在を忘れていた私は、再度鳴ったその音にまたまた驚いてしまった。


誰だろう?
お兄ちゃんはちゃんと鍵を持ってるはずだし
今日帰ってくるって言ってたけれど、昨日出勤したばかりだからこんなに早く帰ってくるわけないよね?

そう思いながら私はドアの内側にあるドアロックをかけたままドアを開けた。
ドアの隙間から外の様子を覗き込んだ私。

その隙間から確認できたのは

「おはよ・・・鍵、持ってくるの忘れた。もう朝メシ、食っちゃった?」

グレーのロングコートを着た、この家の主の姿だった。




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