ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来

「無事だったみたいで・・・安心した。」

『えっ?』

「だから・・・いや・・・やるかな。挽肉オムレツぐらいしか作れないけど、食べるだろ?」


浜松からちゃんと帰ってこれたか心配をかけていたのか、彼はそう言いながら、玄関にあるコートハンガーにかけてあった白色のパーカーを手に取って緑色の手術着の上に重ね着した彼。


この人
夜勤明けでも
テキパキとご飯を作ってくれたりもするんです
ゴハン作るの、スキみたいで
しかも料理人になれるぐらいのたいした腕前


「靴下早く履いてきたほうがいいぞ。足冷やすといいことないからな。」

そう言いながら、再び下を向き、靴を脱ぎ始めた彼。


この人
世話を焼くのもスキというか
きっと世話を焼きたくなるぐらい
私、頼りないのかな



でも世話を焼かれるの、イヤじゃないんです
だって、大事にされているなんて思えちゃえるから


“大事にされている”

その言葉がアタマにふっと浮かんでしまった私は
見事に顔が紅潮してしまっていた。

そんな私だったから
彼とはロクに目を合わせられないだけでなく
顔すらまともに見ることができなくなってしまっていた。


そして彼はというと
彼も白衣脱いだり、聴診器を置いたり、パーカーを重ね着したり、靴脱いだりと
かなり忙しそうで・・・

それらを行っている最中だけでなく
それらをやる終えた後も
私と目を・・そして顔をもまともに合わせようとする気配が見られなかった。




なんか、私の様子の変化を特に気にしてる感じもなさそうだし、
私への声かけなんかも・・・いつもの彼のままって感じ
いつものお兄ちゃんって感じ

なんか緊張しちゃったりしてるのは
私だけ、なのかな?



そして彼が私と顔を見合わせないまま上がり框に上り、私とすれ違いそうになった瞬間、


「ただいま」


小さな声でそう声をかけてくれた。
あまりにも小さな声だったから彼の様子が気になって彼の顔を見上げた私。

その時の彼の顔は、意外にも
頬が、そして耳までもが真っ赤になっていた。


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