ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


まずは手始めに、彼を呼ぶ時の、“お兄ちゃん”  を止めた私。
いざ、彼の名前を口にすると、ぎこちなくなってしまったけれど。


「ん?うん、あ、アツアツ・・・だな?」


でもぎこちないのは私だけじゃなかったみたいで
彼の顔は更に紅くなっていて。
そう返事をした直後
彼は逃げるようにキッチンのほうへ向かってしまった。


そして彼と私と祐希は
なんとなくぎこちない雰囲気の中
彼手作りのアツアツの挽肉オムレツを囲みながら、のんびりと朝食を楽しんだ。



私ひとりがこのシアワセな空気の中で浮き足立ってるんじゃないんだね?
ひとりなんかじゃなく、彼だってきっとそう
浮き足立っているけれど
一緒に彼と一緒に歩んでいるのを感じ取ることができて
やっぱり私はシアワセなんです


でも


「伶菜、悪い。俺・・・また病院に戻らなきゃいけないんだ・・・次いつ帰れるかわからないけれど、また連絡するから・・・・」

彼は申し訳なさそうな顔で私に謝った。



“えっ、今から出勤?”

“もう病院に戻っちゃうの?”


彼に甘えたいモードの私の喉元まで出掛かったその言葉達。
彼と一緒に居られたのは正味たったの2時間弱・・・

だから、彼の傍にずっといたい私はそう言いたくなった。


でも、彼は人手不足な状態の産科医師。
今までなら、きっと帰ってくることなくそのまま勤務していたんだと思う。
だけど、彼は帰ってきてくれた。
きっと、僅かな時間でも傍にいてくれようとしたんだと思う。


だから、私は敢えてその言葉達を飲み込み

『連絡、待ってる、ね♪』

微笑みながら自分でも恥ずかしくなるような甘い声で彼にそう返した。
彼と一緒にいられない寂しさが彼に伝わらないように細心の注意を払って。





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