トキメキのその瞬間を
学食であの二人を見る事は滅多になくて、その理由はこの驚くほど遠巻きに野次馬達が見ているのが原因なのかもしれない。
一年はまだしも、2、3年生はあの二人に会える機会なんて滅多に無いだろうから、チャンスだとばかりに二人を見つめている。
イケメンはイケメンで大変なんだなぁ。なんて思いながら食堂のおばちゃんにAランチ定食を注文してそれを受け取るとくるりと後ろへと振り返った。
その瞬間、ドンッと何かにぶつかりその勢いでお盆に乗っていたコップがパシャッと水音を立てて豪快に床へと落下していく。
カラカラと転がっていくコップ。それとワンテンポ遅れて何が起きたのか気がついた私は慌てて前を向いた。
「……あ」
目の前には神白千秋…
しかもその表情は酷く怒っていて…
それもそのはずだ。だってぶつかった衝撃で倒れたコップは彼のワイシャツを思い切り水でびしょびしょに濡らしていたのだから。
彼は眉間にシワを寄せ、迷惑そうに濡れたワイシャツを見たあと…目の前に立っている私を見下ろした。
ど…どうしよう…どうしよう…っ
頭の中は完全にプチパニック状態なのに、言葉は思うように出てこなくて、必死で必死で考えた結果…まさかの…
「…すみませんでした!どうぞ!!」
あろうことか私は持っていたお盆をズイッと前に出して神白千秋へと押し付けた。