強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
そのあと、せっかく実家へ来たのだから私の母にも挨拶をしていこうということになり、二階にある自宅へと向かう。

リビングに置かれている母の仏壇の前に、真夜と並んで座ると手を合わせた。


今日も、母は遺影の中で優しく微笑んでいる。


そういえば、母は最期の瞬間にどんな表情をしていたのだろう。ふと気になり当時のことを思い出そうとするけれど、やっぱり思い出すことができない。


記憶から消えてしまうほど、私にとって母を亡くしたことはショックな出来事だった。


どんなに思い出そうとしても、そこだけすっぽりと切り取られたように思い出すことができない。

でも、ただ漠然と悲しい気持ちだけは今でも残っていて、母のことを思い出すと胸がしめつけられるように苦しくなる。


今も、遺影の中の母の笑顔を見つめながら少し泣きそうだ。

けれど、私は必死にそれをこらえる。たぶん、まばたきひとつでポロッと涙が落ちそうだから、必死に目を大きく見開いて耐えている。


「――ごめんな、明」


すると、隣から不意にそんな声が聞こえた。

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