強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
男の人の裸を見慣れていない私には刺激が強くて、目のやり場に困るからやめてほしい。

そう何度もお願いしているけれど、どうやら真夜にとってはそれが習慣になっているらしく、なかなか直してもらえない。

相手は、子供の頃から知っている幼馴染みの真夜だけど、細身なわりにほどよく筋肉のついた上半身を見るたびにいつもドキッとしてしまう。

そんなふうに普段は直視できないほど恥ずかしいのに……。

今は布団の中で、上半身裸の真夜の腕の中にすっぽりとおさめられてしまっている。

彼のほんのりと温かい体温を感じて、緊張からか身体が固まってしまった。

でも、早くこの体勢を何とかしないといけない。

どうやら真夜はまだ寝ているらしく、寝惚けて私を布団の中へ引きずり込んだらしい。

「真夜、離してよ」

抱き締められて密着している身体を離そうと抵抗を試みる。けれど、私を抱き締める真夜の腕は思ったよりも強くてなかなか離れてくれない。かといって真夜が起きるまでずっとこのままというわけにもいかない。

なんとかこの拘束から抜け出さないと……。

すると、真夜の口がムニャムニャと微かに動いて、ボソッと何かを呟いた。


「――ゆあ」


……誰?

不意に飛び出てきた知らない女性の名前に、つい表情が険しくなってしまった。

もしかして、真夜は私を誰かと間違えて抱き締めているのかもしれない。例えば、以前付き合っていた女性とか……。

そう思った瞬間、何だかムッと嫌な気分になった。
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