ストロベリーキャンドル
*
仕事もすぐに慣れて、1か月で仕事を1人で任せられるようになった。
みんな優しく教えてくれて、一人でやる仕事もみんなでカバーし合う、
そんなファミリーのような職場に感謝した。
仕事が充実して、仁がいない寂しさも補えていた。
仁とはメールや電話をして連絡を取り合っていたから、
本当に寂しくなかった。
国際電話はお金がかかるのが痛かったけれど。
それなりに楽しく過ごせていたから、ずっと笑っていた。
もうすぐ仁も帰ってくる。
帰ってきたら休みの日とかにいっぱい出かけるんだ。
楽しみでしょうがない。
今日も仁から電話がかかってきた。
お風呂に入って寝る支度をしてからベッドに入って仁の声を聞く。
これが私の日課みたいなものになっていた。
「仁。今から仕事?」
〈ああ、明日には帰れるよ。やっと奏音に会えるな〉
「ほんと?明日土曜だし、空港まで迎えに行くね」
〈ありがとう。なぁ、奏音。
俺さ、君に伝えたいことがあって―〉
突然、ガアン、という大きな音が携帯の向こうから聞こえた。
劈くような大きな音にびっくりして一瞬携帯を耳から離す。
何が起こったのか訳が分からずに、私は仁の名前を呼んだ。
「仁。今の何?」
〈ザ……ザザー……ザ〉
いくら仁の名前を呼んでも、ノイズ音しか聞こえない。
嫌な予感がしてきて、さっと青ざめる。
仁に何かあったの?
もしかして、事故?
しばらく大きな音が聞こえたかと思うと、
唐突に電話が途切れた。
電話をかけ直してみても、繋がらない。
ベッドから飛び起きて、寝室内をぐるぐる回った。
すると、ピリリリ、と電話が鳴った。
慌てて画面を見ると、知らない番号からだった。