ストロベリーキャンドル





仕事もすぐに慣れて、1か月で仕事を1人で任せられるようになった。


みんな優しく教えてくれて、一人でやる仕事もみんなでカバーし合う、
そんなファミリーのような職場に感謝した。


仕事が充実して、仁がいない寂しさも補えていた。


仁とはメールや電話をして連絡を取り合っていたから、
本当に寂しくなかった。
国際電話はお金がかかるのが痛かったけれど。


それなりに楽しく過ごせていたから、ずっと笑っていた。


もうすぐ仁も帰ってくる。
帰ってきたら休みの日とかにいっぱい出かけるんだ。
楽しみでしょうがない。







今日も仁から電話がかかってきた。


お風呂に入って寝る支度をしてからベッドに入って仁の声を聞く。
これが私の日課みたいなものになっていた。


「仁。今から仕事?」


〈ああ、明日には帰れるよ。やっと奏音に会えるな〉


「ほんと?明日土曜だし、空港まで迎えに行くね」


〈ありがとう。なぁ、奏音。
 俺さ、君に伝えたいことがあって―〉










突然、ガアン、という大きな音が携帯の向こうから聞こえた。












劈くような大きな音にびっくりして一瞬携帯を耳から離す。
何が起こったのか訳が分からずに、私は仁の名前を呼んだ。


「仁。今の何?」











〈ザ……ザザー……ザ〉












いくら仁の名前を呼んでも、ノイズ音しか聞こえない。


嫌な予感がしてきて、さっと青ざめる。


仁に何かあったの?
もしかして、事故?


しばらく大きな音が聞こえたかと思うと、
唐突に電話が途切れた。


電話をかけ直してみても、繋がらない。


ベッドから飛び起きて、寝室内をぐるぐる回った。
すると、ピリリリ、と電話が鳴った。


慌てて画面を見ると、知らない番号からだった。



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